大切な人を静かに送る直葬というかたち
大切な人を静かに送る直葬というかたち ~流れと心の準備~
はじめに
大切な人とのお別れは、突然のこともあれば、いつかは必ず迎えるものでもあります。

そのとき、どんなふうに見送るか――
「静かに、家族だけで」「できるだけシンプルに」
そんな想いから選ばれるのが、直葬というかたちです。
今回は、基本の流れに加えて、
- どんな気持ちで向き合えばよいか
- 準備で迷いやすいポイント
- 菩提寺がない場合の供養の考え方
などを詳しくご紹介していきます。
直葬とは、どういうお別れ?
直葬は、通夜・告別式といった宗教的な儀式を行わず、火葬だけで見送る葬送スタイルです。
言いかえると、「形式を簡略にして、心に集中する」送り方。
大きな式場も、参列者も必要ありません。
とはいえ、決して「何もしない」わけではありません。
故人との最期の時間を、家族の手で大切に見送る。
その本質は、どんな葬儀とも変わらないのです。
直葬を選ぶ背景
~多様な事情に応えるかたち~
現代で直葬を選ぶ方には、さまざまな事情があります。
- ご本人が「質素に送ってほしい」と希望していた
- 遠方の親族が多く、集まるのが難しい
- 金銭的な負担を抑えたい
- 菩提寺がない※1
- 介護や看取りでご家族が疲弊しており、体力的に儀式が難しい
こうした声に寄り添い、「無理なく、でも心を込めて送りたい」という想いを叶える方法として、直葬は選ばれています。
※1菩提寺とは
「菩提寺(ぼだいじ)」とは、先祖代々のお墓があるお寺のことをいいます。
昔からその家のご供養をお願いしてきたお寺で、葬儀や法事、戒名の授与などもお願いするのが一般的です。
直葬の流れと、ポイントごとの心づもり
① ご逝去後の初動
- 病院や施設で亡くなられたら、まずは菩提寺がある場合お寺へ、その後葬儀社へ連絡します。
- 自宅安置、または安置施設での預かりになります。
☘ここでのポイント
安置期間中、「お顔を見ながら語らう時間」を持ちましょう。
直葬は儀式を行わないため、この最初の時間が心の整理につながることも多いです。
また、故人の表情を見つめながら、どんなかたちで送りたいか、家族で静かに話し合うこともできます。
お花を添えたい、お気に入りの服を着せてあげたい、読経を入れるかどうか――
小さなことでも、故人らしさを大切にした送り方が見つかるかもしれません。
② 手続き・日程調整
- 死亡届の提出、火葬許可証の取得を葬儀社が代行します。
- 火葬場の空き状況によって、日程が決まります(数日先になることも)。
☘ここでのポイント
火葬までの間に、お別れの言葉や、好きだった物・手紙などを用意しておくと、後悔の少ない送り方ができます。
③ 火葬当日
- 棺にお花や副葬品を入れ、ご家族で火葬場へ向かいます。
- 火葬炉の前で、黙祷や合掌をし、最後のお別れをします。
- 約1~2時間後、拾骨を行い、お骨壺に納めます。
☘ここでのポイント
静かに、短い時間ではありますが、ご家族で交わす一言一言が深く残る時間です。
火葬場に希望があれば、読経を依頼することもできます(後述)。
菩提寺がない場合はどうする?
~供養の選択肢~
近年、ご家族の転居や都市化の影響もあり、「お付き合いのあるお寺がない」「どこに相談してよいかわからない」という方が増えています。
ご先祖代々を見守ってくださっているお寺(=菩提寺)がある場合には、葬儀や供養についてまずご相談いただくのが自然な流れです。
一方で、そうしたご縁がまだない方や、事情がある場合でも、安心して送りの時間を持てるよう、いくつかの選択肢をご紹介しています。
たとえば、こんな供養の方法があります
- 読経だけのご依頼(炉前読経など)
必要に応じて、信頼ある僧侶をご紹介し、火葬前後の読経を行うことも可能です。 - 後日のお参り・納骨に関するご相談
お寺との新たなご縁を希望される場合も、適切なお寺様をご案内できます。 - 永代供養墓や納骨堂のご案内
「お墓がない」「承継者がいない」といった方にも安心な供養先をご紹介しています。
心の準備として、大切にしておきたいこと
直葬では「形式」が少ないぶん、心の整理”が後からやってくることもあります。
火葬後に、「あっという間だった」と感じることも珍しくありません。

そんなときは――
- 供養の場を後日つくる(お別れ会、偲ぶ会などの自由葬)
- 故人の好きだったことを思い出す時間をとる
- 写真や思い出の品を手元に置いて話しかけてみる
少しずつ、少しずつで大丈夫です。
急がなくていい。
大切な人との別れは、かたちよりも気持ちがすべてです。
まとめ
~静けさの中に、あなたの想いを~
直葬は、静かで、質素で、あたたかな送り方。
華やかさや賑わいはないかもしれませんが、その静けさの中にこそ、あなたの想いがそのまま届く送り方です。
形式にこだわらなくても、心を込めて送れば、それは何よりの供養になります。
「こうしなければいけない」という決まりはありません。
あなたと、あなたの大切な人にとって、一番自然で、後悔のないかたちを。